私が過去に作られたまだ観ぬ韓国映画で、これだけはゼヒ観たい、と思っていた作品。
そのワケは、いつか紹介した「韓国映画ベスト100」の中で、寺脇氏がベスト1に挙げ絶賛されていた映画だから・・・
他人の評価をあんまり信じないヘソ曲がりの私ですが、こんなよい映画を見逃していたことを後悔するほど、見応えある社会派人間ドラマです。
私が選んだ韓国映画べスト10は、ほとんど自分の好みで選んだワケですが、好みとは別に、もしこの「ペパーミント・キャンディー」を観ていたら、やはり上位に入れたい。
なぜなら、物の価値基準というのは、たしかに、厳然とあるからです。
たとえそれが美などという抽象的なものであっても、美とは何かを考えてゆけば、ある程度の客観的答えは見つかるのです。
さて、この映画は、ある男の40歳から20歳までの人生が逆行して語られます。
つまり、私たちはまづ結果を見せられ、それへ至る過程あるいは原因を、遡って知ることとなります。
これは、現実の人生においてはあり得ないことです。
しかし、記憶についてなら、記憶はもともと時間を超越しているとはいえ、やはり新しい記憶から古い順に辿ることはよくあることです。
そーゆー意味でこの映画は、一人の男の記憶を写し出した映画、ともいえます。
1999年から始まり、3日前、5年前、12年前、15年前、19年前、そして20年前・・・
一人の男にとって、彼の人生の節目であったそれらの年は、社会にとってもある節目の年、大きな事件のあった年でもあった。あるいは、その逆でもあった。。。
この映画は、個人の人生が、彼の生きる時代と社会によって、どのように変えられていったのか、時代と社会に翻弄される人間の弱さ、悲しさを描きます。
しかし、それと同時に、人間には敢えて幸福ではなく不幸を選んでしまうような不思議な性癖があるような気がふとしたのは、私だけでしょーか。
1979年~1999年という韓国現代史については、ドラマなどでも垣間見たワケですが、そのどんなドラマよりもこの1本の映画は、多くを語っていると思います。
時間の長さや詳しい史実、言葉の多さを超えて、強く訴えかけるチカラがあります。
わずか2時間の映画の中に、一人の人間(その時代や社会も含めて)の20年間が、その恋、仕事、人生の全てが凝縮されています。
この映画は、知らなかったのですが、監督・主演俳優とも「オアシス」と同じメンバーです。
「オアシス」では、ムン・ソリ씨の演技におったまげましたが、この映画ではソル・ギョング씨の演技が鬼気迫る、って感じです。
モチロン、脚本も手がけられたイ・チャンドン監督のすばらしさは言うまでもありません。
このシリアスな映画で、実に重要な役を果たすのが純白のペパーミント・キャンディー、それは初恋の味にも似て、この男の人生のたった一つの爽やかな記憶、秘められた恋の思い出でもあります。