今年の七夕にはサン=テグジュペリの「星の王子さま」ではなく「夜間飛行」を読んだ。
だいぶ前に買っておいた文庫本が本棚にあったので、読んでみることにした。
いつか読もうと思いつつも、実はまだ読んだことがなかったのである。
なので、一冊の中に「夜間飛行」と「南方郵便機」の二編が収められていることすら知らなかった。
しかも、長さから言えば、「夜間飛行」の方が短いくらいなのだった。
そんなわけで七夕前から読み始め、ちょうど七夕の午前中に読み終えたのだった。
読み始めは、「星の王子さま」とのあまりの作風の違いに戸惑ったのだった。
とても同じ作者とは思えないのだった。
「夜間飛行」は郵便飛行業の草創期の話で、夜間飛行に従事する人々の命を賭けた闘いが、実にリアルにドキュメントのように描かれているのである。
なので、決して子供向けの童話とは言えないが「星の王子さま」とは、言ってみればジャンルの違う作品みたいに思えたのだった。
けれど読み終わってみると、やはりどちらもサン=テグジュペリしか描けない世界がそこにあったのである。
なぜなら彼自身もまた夜間飛行の体験者であり、遠い高い空からいつも地上を見ていた鳥のような人だったから。
私はサン=テグジュペリがパイロットであったことも、また洋上で墜落死したことも知ってはいたが、その厳しい現実は知らなかった。
なのでこの「夜間飛行」で初めて知ったのである。
そして、そんな彼の体験から生まれたのが、あの美しい「星の王子さま」だったのかと、改めて思い知らされたのだった。
何度読んでも新しい発見がある不思議な物語「星の王子さま」、これからもずっと読み続けていくことだろう。