暖冬が一転、モーレツな寒波と低気圧に見舞われた日本列島。
当地も粉雪が舞い一時地面が白く薄化粧した昨日、悪天候にもメゲズ今年初めての映画に行った。
画家藤田嗣治を描いた小栗康平監督、オダギリジョー主演の「FOUJITA」である。
映画は全体的に抑えた色調で画面も暗く、ふと、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」を彷彿した。
また、フジタの画家人生を二つの時期、1920年代フランス・パリ時代と1940年代戦時の日本に分けて描かれる。
パリ時代のフジタは、すでに、かの乳白色の肌で成功を収め、エコールド・パリの寵児となっていた。
美しいパリジェンヌと出会いと別れを繰り返し、夜ともなればパーティに操り出しどんちゃん騒ぎに興じていたのだった。
そんなフジタを、画家仲間たちはフーフー(お調子者)と呼んでいた。
しかし、絵に対しては並々ならぬ情熱を持ち、不断の努力を惜しまなかったばかりか、類いまれな野心と戦略の持ち主でもあった。
帰国した戦時の日本でフジタは、パリ時代とは似ても似つかない「アッツ島玉砕」に代表される戦争画を描く。
私は残念ながらフジタのいわゆる戦争画を実際には見た事はないが、まさしく西洋画そのものの写実的な群像が描かれ、その迫力と技術力には圧倒される。
フジタは、軍部に依頼されて絵を描いたのだが、私的にはその絵が戦意高揚に役立ったとはとても思えない。
むしろ、あまりの悲惨さに、戦意消失するのではないか、と思われるのだ。
パリでは日本伝統の技術を使い、日本の美意識を拠り所にした絵を描き、日本では逆に古典的な西洋絵画の技術を駆使した絵を描いたフジタ。
しかし、そのどちらもがフジタの絵であり、おそらく、ありったけの情熱を傾けて描いたに違いない。
映画には描かれないが、敗戦後、フジタは戦争協力者として日本美術画壇から追われるようにして再び渡仏。
二度と祖国の土を踏むことなく、フランス国籍を得フランスで永眠した。
小栗監督の手腕が冴えて?舞台が日本になってからの映像、とくに風景が美しく、幻想的である。
また、主演のオダギリジョー、ファンだから言うわけではないけど、ぴったりぽん!でした。
ちなみに、私はフジタの猫の絵をこよなく愛しています。