一昨日の東京日帰りの折、偶々東京ステーションギャラリーで鴨居玲の展覧会が開催されていた。
あまりうろうろする気はなかったので、東京駅なら新幹線の乗車駅でもあり、観ることができたのだった。
私が鴨居玲を知ったのは、つい最近のことである。
先日、半世紀ぶりに会った金沢在住の同窓生が教えてくれた。
同窓会から帰って後、彼女から数枚の絵葉書が送られてきた、その中の一枚が鴨居玲の「出を待つ(道化師)」だった。
そして、石川県立美術館の今年のスケジュール表が同封され、鴨居玲展の予定に大きな矢印が付けられていたのだった。
金沢出身の鴨居玲、故郷金沢での、しかも没後30年の記念の展覧会。
たぶん、できれば観て欲しいという、彼女からのメッセージだったのではないか。
その展覧会が、金沢ではなく東京で開催されることを、それも偶然日曜美術館アートシーンで知り、今回観ることができたのはラッキーというほかない。
初めて見る鴨居玲の絵は、徹底した写実と自画像はじめ人物画が多い。
スペイン時代の老人や酔っ払いを愛情深い目で描いた人物像、しかし、帰国後多く描いた自画像は、自己の内面を抉り出して、観る者の心を捉えて離さない。
57歳の若さで自ら命を絶った画家の、魂の叫びが聞こえてくるようだ。
そんなわけで、一つで十分満足だった展覧会だのに、二つも観ることができたのだった。