岡山では観られないのか、と思っていたら、岡山イオンシネマで上映されていた。
行くのは初めてなのだが、今日は雨の中観に行った。
うつくしく、かなしく、そして、生きる意味について、しみじみ考えさせられる映画であった。
物語は、春爛漫、桜満開の季節から始まり、同じ桜満開の季節で終わる。
その一年の間に、一人の中年のどら焼き屋の店主と、70代半ばの老女との出会いと、別れがある。
徳江はどら焼き屋で、あずきのあんづくりのアルバイトをするようになる。
しかも、どちらかいえば、彼女の押しかけアルバイトなのである。
でも、徳江の作るあんは店主の千太郎も驚く旨さで、どら焼きは評判になり、急に売れ行きが増す。
徳江のあんのつくり方は独特で、あずきの声を聴きながら、あずきと会話しながら心を込めて作る。
彼女にとっては、「この世にあるものは全て言葉を持っている」のであった。
しかし、彼女がかってハンセン病であったことが分かると、状況は一変する。
ここで初めて、私たちはこの静かな映画の、重いテーマに気づかされるのだ。
ハンセン病、すなわちライ病と呼ばれた病気が世間から負った、理不尽な仕打ちについて。
けれど、また私たちは知るのだ、教えられ学ぶべきは自分たちなのだと。
「私たちはこの世を見るために、聞くために、生まれてきた。
だとすれば、何かになれなくても、私たちには生きる意味があるのよ」
甘党でなくても、どら焼きが無性に食べたくなります。