この本は偶さか新聞広告で見つけ、いわゆるタイトル買いである。
おまけに、表紙になぜか佐野洋子の挿絵が使われているのだった。
著者は緩和ケア医ということで、これまで約2500人を看取ってきたという。
そしてその経験から、人の死の真実、あるいは緩和ケアの現実が実にリアルに語られている。
『人はいつか死ぬということを知り抜いたうえで、自分の考え方に沿った自分だけの最期を作り出していくことができるというのが”心の力”であり、それさえあれば「ひとりで死ぬのも大丈夫」だと思います。』という。
また、『どんな”介護力”や”経済力”を備えることができるかは人によって大きな格差がありますが、自分らしい自分を見つけ出し人生の総仕上げをする”心の力”は、誰もが平等に持ちうるものです。』ともある。
それはある意味すごく勇気を与えられる言葉であると同時に、じつに難しい課題でもある。
なぜなら、そんな”心の力”をどう築いていったらよいかは、一読しただけでは答えは出ない。
今はただ、自分の死生感をより具体的に、より確固としたものに育んでいくしかないようである。
帯に姜尚中氏、落合恵子氏の推薦文があるが、今の私の気持ちにはピッタリな本ではあった。