今日、やっと雛人形を出した。
出すまでは面倒に思うのだが、イザ出すとうれしく、並べることさえ楽しい。
幼女のあそびは老女になっても変わらない?
この雛人形は、正真正銘の昭和の雛人形である。
私の母が、昭和30年前後に作ったものである。
その様子を、小学生だった私はよく覚えている。
趣味でされている上品なご隠居さんが先生だった。
生徒は母を入れて三人、おけいこは各家を持ち回りでしていたと思う。
まだ日本は貧しく、物のない時代であった。
そんな時代に、こんな優雅なおけいこごとをしていたのかと、ちょっと不思議である。
先生も生徒たちも、平均的なフツーの主婦であった。
当時とは比べ物にならないくらい豊かになった現代。
けれど、時間に追われ、消費に追われ、心はずっと貧しい気がする。
また、自分は母の足元にも及ばないことをつくづく実感する。
もともと、しっかり者の母に出来損ないの娘ではあったのだが・・・
とにかく、バリバリの大正モガだった母は、何でも手作りする器用な人でもあった。
こどもの頃から母の手作りの洋服で育ち、今も母の染めた着物を箪笥のコヤシにしている。
雛人形を出すたび、私は幼い頃に、ダメな娘に戻ってしまうようである。