韓国映画は毎年観てはいるが、なぜかスターの出ないマイナーな映画ばかりである。
にもかかわらずが、私的年間ベスト1が3年連続つづいている。。
このイ・ビョンホン主演の「王になった男」は、久しぶりのメジャーな韓国映画である。
何年ぶりか考えたら、2009年の「
グッド・バッド・ウィアード」以来なのだった。
さて、この「王になった男」、一口で言えば韓国版影武者である。
影武者は、テーマとしてはさして新しいものではなく、今までにも映画や小説で知られている。
私が思い出すのは映画では黒澤明の「影武者」、小説では隆慶一郎の「影武者徳川家康」である。
朝鮮王朝15代目王・光海の影武者として選ばれたのは道化のハンソン。
暗殺の影に怯え暴君と化した光海がある日病床に伏してしまう。
その事実を隠すために、彼は臣下の前で影武者としてではなく王としてふるまわざるを得なくなる。
さいしょ、あまりの生活の変化に戸惑うのだが、しだいしだいに王として目覚めてゆく。
そして、王とは民のためにあるべきだと考えるに至り、それを実行しようとする。
そんな王の変化に疑問を抱く反対勢力は、やがて王が偽物であることに気づくのだが・・・
朝鮮王朝を描いた絢爛豪華な王朝時代劇はドラマでもおなじみである。
この映画は、そのスケールの大きさ、製作費、キャストなどにおいて、やはり群を抜いている。
その一番の理由は、本物と偽物、暴君と聖君を演じ分けるイ・ビョンホンの演技力、ということになるのだろう。
とくに、本物の王ではなく、道化が演じる王を演じるビョンホンは、これこそ彼の真骨頂である。
私は、イ・ビョンホンは、どちらかといえば、コミカルな演技が好きである。
おせじにもイケメンとはいえないが、いったん役を演じると、実にチャーミングになる。
そんな俳優は数少なく、韓国ではチェ・ミンス、ソル・ギョング、そしてイ・ビョンホンくらいである。
昨日は初日でもあったのだが、いつも観客の少ないミニシアターが満員に近かった。
あらためてイ・ビョンホン人気(韓国映画のではなく)の根強さを実感した。
たとえ「
バンジージャンプする」のときほどではなかったにしても・・・・・
ただ一つ注意すべきは、現代にもこんな政治的リーダーシップを望むことである。
なぜなら、今必要なのは一人の強いリーダーではなく、一人ひとりの自覚と行動だからである。