2012年の映画にかんしては、私的には園子温監督に始まり園子温監督に終わった、といえる。
今年最初に観た映画が「ヒミズ」、そして今年最後になるだろう映画がこの「希望の国」である。
現実の事件を題材にした問題作を次々発表し続ける園子温監督、しかしこの日本映画界の鬼才を私が知ったのは「ヒミズ」が初めてである。
その後実は、「冷たい熱帯魚」のDVDを購入、視聴したのだが、そのあまりの過激さに衝撃を受け、それ以来お蔵入りになっている。
「ヒミズ」の泥まみれとは違い「冷たい熱帯魚」の血まみれは、猟奇的で身の毛がよだつってもん。
さて、「希望の国」は原発事故をテーマにしているのに、園監督の作品とは思えないほど、静かに淡々とある家族を中心に話が進む。
福島原発事故から十数年か数十年後、日本の何処かで地震、津波が発生、原発事故が再発する。
そして、同じように被災者は翻弄され、果てしない苦難が始まるのである。
酪農を営む主人公は、認知症を患う妻と息子夫婦と四人、仲良くしあわせに暮らしていた。
しかし、原発事故がそんなささやかな日常をあっけなく奪ってしまう。
放射能汚染を心配して息子夫婦には断固避難させる主人公、自分たちはたとえ強制退去を命じられても家に残ることを決心する。
しかし、性と暴力こそ無いものの、やっぱりタダでは終わらない園子温作品。
前半の静かな展開が、やがてラストへ向って急速に駆け上ってゆくのである。
何の責任も取らない国と、全ての責任を一身に引き受ける主人公。
家族を護るために主人公のとった行動はなんと潔いことか。
被災地の情報ではなく、情緒や情感を描きたかった、という園監督。
実際に被災地で撮影したにもかかわらず、数々の美しい映像とマーラの交響曲が効果的。
希望とはいったい何なのか、と思う。
希望とは、絶望と紙一重なのだろうか。