悲しくて泣くのではなく、感動のあまり涙が出る映画というのも近頃珍しい。
これはそんな韓国映画感動の一編です。
社会はもちろん、自分の家族からも疎外された男女の至高のラブストーリーです。
前科もありすこし頭の弱いらしい青年ジョンドゥが、刑務所から出所してまもなく、高度脳性麻痺の女性コンジュと出遭います。彼女はジョンドゥが交通事故死させた被害者の娘なのですが、兄夫婦に見捨てられ、一人で暮らしてゆくところでした。そんなコンジュに、よからぬ動機からとはいえ、ジョンドゥは興味を持ち次第に魅かれてゆきます。コンジュもまた、自分を一人の女性として接してくれるジョンドゥに心を開いてゆくのです。
社会の偏見、家族の彼らを疎外しながらも利用するというずるさは他人事ではありません。
テーマは重く社会的とも言えるのですが、意外と暗くなく救われます。ジョンドゥのコンジュに対するぎこちないけれど純粋な愛情はほほえましい限りですし、コンジュもまた彼の愛情に不自由な身体で精一杯応えるのです。ときどき彼女が突然健常者の姿になったりする場面があるのですが、それは彼女の願いでもあるでしょうし、彼女の外からでは見えない内面の姿でもあるのでしょう。
オアシスとはコンジュの部屋に飾られた壁掛けの題名なのですが、その絵の中から像や少年が出てくるファンタジックな場面もおりこまれていて、メルヘンをみるようです。ジョンドゥとコンジュにとって、ふたりの愛がオアシスであったように、この映画は私たちにとっての心のオアシスとなるでしょう。
さいごに、二人の俳優ムン・ソリとソル・ギョングには惜しみない拍手を送ります。
特にムン・ソリの高度脳性麻痺者の演技は、演技とは思えないくらいリアルです。
こんな素晴らしい演技者があってこそ、こんな感動的な映画も創れるのです。
韓国映画2005