倉敷美観地区のはずれにある小さな古本屋「
蟲文庫」と、そこのオーナー田中美穂さんの本「
苔とあるく」については、以前紹介したことがある。
その田中さんの2冊目の本「わたしの小さな古本屋」のことを知ったのは、不覚にも、新聞の読書欄の書評であった。そういえば、お店にも、蟲文庫の
ホームページにもしばらくご無沙汰だった。
そこで昨日久しぶりにお店へ行き、ご本人自ら新刊を購入した。
著者本人から本を買うっていうのも、そーそーあることではない。
お互いちょっとテレながら、それでも、今回はしっかりサインもいただいたのだった。
会社を辞めたその日に古本屋をやろうと思った21歳のときから、ほぼ20年間がつづられている。
今でも古本屋とは不釣合いな少女のような田中さん、20年前はきっと女学生みたいだったのではないか。しかし、そのしなやかなつよさは、彼女の愛してやまない苔を思わせる。
人付き合いがあまり得意でなく、じっとしているのが好きだという少女がはじめた小さな古本屋、けっして経営は楽ではなく、営業時間外に数々のアルバイトをするハメになる。
しかし父の死を契機にアルバイトをやめ、古本屋だけでやってゆくことに。
そして2000年に現在の場所に引っ越し、猫2~3匹、亀9匹、クワガタ、金魚、メダカとともに店の帳場に座り続けている。
店には古本のほか手作り品を置いたり、ミニコンサートや展覧会も開かれる。
そして、ときには苔を探してあるいたり・・・
すこしも気負ったところがなく、淡々とした語り口なのだが、ヘタな人生論よりよっぽど心に沁みる。
白状すると、私とは親子ほどの歳の差なのである。
しかし、そのさりげなく爽やかな生き方は、私たちに大切なものは何なのかを教えてくれる。
ちなみに、私は若いころ古本屋ならぬ古道具屋にあこがれたことがあるのですが・・・