実は買い物はあんまりしないけど、よく映画と本を見に行く大型ショッピングモールがある。
そこはその昔、とある会社の社宅があって、私も4,5年住んでいたのだった。
社宅の敷地内には、医局、売店、共同浴場、保育園があり、それらに囲まれた広場に大きなセンダンの樹が数本あった。
そのセンダンは当時から、きっと長い年月を生きてきた立派な大木だった。
そこに10数年前、社宅が潰されショッピングモールが出現したとき、あの懐かしいセンダンの姿を見て私は喜び、ほっとした。
それが、つい最近(不覚にもはっきりした時期は不明)、影も形も無くなっていたのである。
なんでも、リニューアルで店舗拡張のため切られてしまったようなのだ。
私はまるで夢でも見ているようで、すぐには現実とは認められない有様だった。
これは去年の5月、美しい花満開の頃のセンダンである。
秋には、まんまるの実を結ぶ。
その小さな実ひとつでも、創れるものなら創って返してほしい。
私は決して忘れない。しっかりと地に根を降ろし悠然とした姿のセンダンの大木を。
おごるな、にんげん。
一瞬、私は人類の滅亡を夢想する。