昨年末にアマゾンで予約注文していた「密陽」のDVDが、やっと届いた。
最近のアマゾンの傾向として、予約販売のDVDが予定よりだいぶ遅れるのはなぜなのか、と思う。
とにかく、早速観てみることにしたのだが、本編と特典の2枚組になっており、特典DISCがメチャ長いのにはオドロいた。
この「密陽」というのは韓国の地方都市の地名で、それがそのままシークレット・サンシャインなどいう邦題がついているワケなのだが、イ・チャンドン監督がこの地名故にこの地を舞台に選んだとは私には思えないのだが・・・
さて物語は、夫を交通事故で失ったシネ(チョン・ドヨン)が、幼い息子を連れて夫の故郷密陽に引っ越してくる。
ピアノ教師として生活が軌道に乗りかけた矢先、息子が誘拐され、殺害されてしまう。
絶望の淵に立たされた彼女は、やがて神に救いを求めて立ち直ってゆく。
神に救われたシネは、息子を殺した犯人を許そうと刑務所の犯人に会いに行くのだが・・・
何といってもこの映画の圧巻は、自分が許す前に犯人が神に許されていた、と知った時のシネの深い深い絶望、そして信仰も精神も一挙に壊れて行くさまである。
そして、私がこの主人公に一番感情移入できたところでもある。
シネが画面に現れたその時から、私にはどーにもこの女性が危なっかしく、たよりなげて仕方なかったのである。
次々不運に見舞われるシネを、偶然知り合った自動車修理会社の社長ジョンチャンは、煩がられながらも、いつも支え見守り続ける。
彼女が信仰に救いを求めると自分も教会の活動に加わりさえする。
神にも信仰にも絶望したシネにとって、ジョンチャンは最後の救いに、シークレット・サンシャインになれるのか???
この映画で、2007年カンヌ映画祭主演女優賞を受賞したチョン・ドヨンは文字通り体当たりの熱演。
「オアシス」のムン・ソリといい、イ・チャンドン監督は、韓国を代表する二人の演技派女優を誕生させたといえる。
また、「ペパーミント・キャンディ」では時代に翻弄される人間を、「オアシス」では社会から疎外された人間を、そして、「密陽」では運命の試練に曝される人間を描きつつ、人間の救いを問い続けているような気がする。
余談ではあるが、この密陽という地は、昨年読んだ柳美里の「八月の果て」の舞台となった地でもあり、はからずもこの映画によって密陽川や嶺南楼(ヨンナムヌ)を映像で観ることになった。
さいごに、「不運であっても、人間は幸福であることができる」という私の好きな言葉を思い出す。