久しぶりの長編小説。
これがまた、犬好きが嵩じて犬に変身(犬身)した女性が主人公の、摩訶不思議なオハナシ。
といっても、ただの犬ではなく意識は人間のままの化け犬、ってワケ。
身体は可愛い仔犬でも、頭脳は人間の大人なのだから、ややこしい。
主人公房恵は30歳のOL、性同一性障害ならぬ種同一性障害を自認するほどの犬好き。
偶然知り合った女性陶芸家梓に好意をも持つようになり、彼女の飼い犬になるべく怪しげな狼人間のバーテンダーと取引し、自分の魂と交換に犬身する。
念願かなって梓に飼われることになったフサ(房恵)だが、夢のような幸せな生活もつかの間、その異状な家族関係を垣間見てしまう・・・
その異状な家族関係はともかくとして、主人公は犬好きというだけではなく、飼い主と犬との関係、その人間同士の関係をも超えた濃密な関係を、望んでいた。
人間同士よりも純粋で深い愛情のありかたを。
そして、その濃密な関係の中にあるセクシュアリティについても考える。
『親子の間のものであれ友達同士の間のものであれ人間と愛玩動物の間のものであれ、全ての体の触れ合いの中にはあらかじめ性的な快楽の萌芽があるのかも知れない。逆に、全ての性的快楽は親子の触れ合いの快楽に代表されるような原初的な快楽を基盤として発達したものともいえるだろうか』
ふと気になって我が家の猫を見てみれば、相変わらず気持ちよさそに眠っていました。
まっさか~!猫身した人間じゃーないでしょうね?