今から35年前、春になればミモザの花が咲く山の上に家を建てた。
当時は、山が黄色いミモザ色に染まるほど多かったのだ。
それがいつ頃からかだんだん数が減り、今は数本だけになってしまった。
しかも去年まで、私が毎年見に行くのを楽しみにしていた樹が、今年は無くなっていた。
思えば、いつも臨家の犬にモーレツに吠えられながら写真を撮っていたのだった。
山に自生するミモザは、成長が早く大木になるばかりか、枝が伸びてしなだれる。
そこで、枝を切り払われたり、根こそぎ切り取られたりするのである。
その結果、いつの間にか我が山はミモザの山では無くなっていったのだった。
今年もたった数本のミモザが、青空の下、蕾をいっぱいつけた枝を風に揺らしている。
でも、大木すぎるのとまだ花が開いてないので、も少し花を近くで見られる場所を探して車を走らせた。そして、ほぼ1時間走った後、まるで35年前の我が山のようなミモザの群生に遭遇したのだった。
きっとミモザが私を呼んだのだ。
ミモザがこの世に私を引き戻してくれたような気がする。
今日は死から生への不思議な一日だった。