今年初めて本屋で買って読んだ本が、平野啓一郎著「マチネの終わりに」である。
もはや新刊とは呼べないのかもしれないし、モチロン、出版された時から知ってはいた。
ではなぜ、平野啓一郎サマの本を今まで読まなかったのか、あるいは、なぜ今になって読む気になったのかは、自分でも分からない。
でもとにかく、遅まきながら「マチネの終わりに」を読んで、久しぶりにどっぷり小説世界に浸ることができたのだった。
最近読みたい本買いたい本が無く、仕方なく手持ちの本の再読で我慢していたのがウソみたい。
以前だったら徹夜で一気読みしたかもしれないが、サスガにその体力も集中力も今はない。
けれど、それくらい面白く、のめり込んだのだった。
オトナの男女の恋愛を軸に、様々な世界の社会問題、古くは長崎での被爆から現代の紛争・テロ・金融危機・難民問題・天災などを絡めつつ、スケールの大きい物語が展開。
最初、天才ギタリストと聡明で美人のジャーナリストという主人公の設定にはアレ?だったのだが、理不尽な人生を受け入れつつも前に進んでいく二人の潔さには感動。
ちょっと美しすぎる気がしないでもないが、せめて物語だけでも美しい方がイイ!というのが正直な気持ちである。
平野啓一郎といえば、芥川賞受賞作「日蝕」以来のファンである。
我家の本棚にもかなりの著作が揃っており、この度引っ張り出してみた。
これ以外に、文庫本や新書のエッセーも何冊かある。
その中でも今回の「マチネの終わりに」は、この作者独特の美しい日本語の美しい文章が、まるで音楽のようにメロディーがあり心地よい。
そして、わたしとしたことが、思わず感涙に咽んだのだった。