あまり得意ではない映画を、昨日初日に観に行ったのは、たぶん、「怒り」というタイトルが心情にピッタリだったからだと思う。
なので、原作はもちろん読んでないし、映画についても予備知識はほぼゼロなのだった。
原作吉田修一、監督李正相日というコンビは、6年前に観た「
悪人」と同じである。
「悪人」も「怒り」と同じく、あまり積極的ではなく観ているのが、不思議である。
さて「怒り」は、ある殺人事件の逃亡した犯人を追う、という設定なのだが、犯人は顔を整形して逃亡を続ける。
事件から1年後、東京、千葉、沖縄に前歴不詳の3人の男が現れる。
三人はそれぞれに、ある人物とかかわりを持ちはじめ、やがて深い関係となっていく。
殺人犯を追う警察は新たなモンタージュ写真を公開、整形を考慮して作られたモンタージュ写真は、三人それぞれに似てもいるし、似てもいない。
しかし、いったん芽生えた疑いの目は、相手が犯人の顔に見えてしまうのである。
信じることは難しい、けれど、信じる者は救われる、とも言えないのがこの映画。
人間の心の闇、弱さ、存在の不条理さを実感させられる。
また、この三人に関わる人たちは皆、社会から疎外されたマイノリティーでもある。
ただ一つ私的には、発端となった殺人事件、その動機があまりに衝撃的で気が重い。
カミュの異邦人をふと思い出したりした。
この世は人を信じないのも地獄、信じるのも地獄なのだろうか?
2時間を超える長さは感じなかったが、とにかくずっしりと重く、余韻が残る。
主役はいないがキャストは豪華な群像劇、とでもいうのか。
ちなみに、ダンサーとしての森山未來君のファンです。