芥川賞は卒業なんぞと言った舌の根も乾かぬうちに、今回の芥川賞を早速読むことに。
それは先日読んだばかりの「消滅世界」の村田紗耶香が偶々受賞したからである。
ここ数年芥川賞作品はだいたい読んできたが、「コンビニ人間」は読みやすく、面白い。
コンビニという、今や最も日常的で生活に密着した場所が、ガラスのケースの中の異次元に見えたりしてくる。
主人公古倉恵子は、コンビニでのバイト歴18年、マニュアル化したコンビニ店員としてしか生きてゆけない。
そんな就職もせず結婚もしない彼女を、家族や友人や同僚でさえ異端視する。
しかし、婚活目的の新入り男性が現れて、しかも物の弾みで同居することになり、事態が急変していく・・・
ここで問われるのは、普通とは何かということであり、正常と異常、あるいはマジョリティーとマイノリティーの問題である。
そして、これはなかなかに難しい問題なのである。
そういう点で、この小説にかんしては、あまりに短絡的な気がしないではない。
今どき、就職もせず結婚もしない人間はけっして珍しくはないし、選ぶ自由はある。
他人の思惑なんぞ気にせず、自分は自分、他人は他人で生きていけばよいのである。
「消滅世界」では、性と生殖を切り離した人間の近未来が描かれていた。
また「コンビニ人間」は、主人公のようにマニュアル化されないと生きてゆけない、人間のロボット化をふと思わせた。
それが、「遺伝子の呪縛から脱することに成功した唯一の生物(福岡伸一)」である人間の幸福、あるいは不幸なのかも。。。