お盆を過ぎた頃から、ソロソロ夏休みも終わりに近づいてきたなと、うすうす感じるようになる。
夏休みの宿題がまだ終わらない子どもの頃の記憶が甦ったりするのは、怠け者の報いだろうか?
夏休み気分な私にとっても、なんとなくどこからか秋風が吹き始めた今日この頃、この夏の読書のほんの覚え書きを残さんとて。
といっても、この夏は本屋に行っても、図書館に行っても、なぜか読みたい本がなく、しかたなく手持ちの本の再読でごまかしていた次第。
この本は、小冊子で本文も短くすぐに読めるのだが、内容は濃く深く、哲学者カントのことばに耳を傾ける大切さを実感する。
以前のレビューではしなかったのだが、今の私の心情にあまりにピッタリだったので、いくつか引用させていただきます。アシカラズ
「国家は所有物でも財産でもない。国家は一つの人間社会であって、みずからで支配し、みずからで運営する。みずからが幹であり、みずからの根を持っている。」
「行動派を自称する政治家は、過ちを犯して国民を絶望の淵に追いやっても、責任は転嫁する。」
「永遠平和は空虚な理念ではなく、われわれに課せられた使命である。」 他多数・・・
カズオ・イシグロから離れるハズが、ふと本棚で見つけて再読することになった。たぶん、半月くらいかかったのではないだろうか。一気にではなく、夜な夜な寝る前や目が覚めた真夜中、はたまた早朝に読んだりしていた。
この本も以前レビューはしているが、あらためて、「細部まで抑制が利いていて、入念に構成されていて、かつ我々を仰天させてくれる」という柴田元幸氏の評に同感する。これは、カズオ・イシグロ作品全てに共通するとも言えるが、この「わたしを離さないで」がやはり一番特徴的なのではないか。
この戦慄すべき内容が、なぜこんなに淡々と静かに語られるのか。そして、涙がじんわりにじみ出る感動的なラスト(とくに22章、23章)。タイトル「わたしを離さないで」の深い意味、けっして聞こえることのなかったトミーの叫びなどなど・・・
この2冊は7~8年前に買って読んだ本で、よくぞ買っておいたと今では思う。屡々なぜ図書館で借りないのか、と言われるが、私はやっぱり本は買っておきたいのである。なぜなら、今回のように、急に再読したくなることがけっこうあるのである。
また買った本の大部分は、捨てずに置いている。なにしろ、高校時代の「太宰治全集」はおろか、小学時代の「アルセーヌ・ルパン全集」まで、今もまだ残っているという物持ちの良さ。ついでに言えば、まんが「カムイ伝」も全部あるが、これはわたくしの持ち物ではない。
「本を読む快楽を知るということは、孤独にも耐えうる強い力を手に入れたことと同じだ」と信じるし、またそれを実践して生きてきた、と私は思う。