「お勝手太平記」で味を占めて、金井美恵子の短編集を2冊ばかり読んでみた。
講談社文芸文庫から自選短編集が出ていたので買って読んだのだが、金井美恵子はやっぱり不思議の国の美恵子さんなのだった。
全16篇が収められた自選短編集なのだが、どれもストーリーはあるようなないような・・・
絵画に具象絵画と抽象絵画があるように、これは抽象小説とでもいうのだろうか?
なので私的には、小説というよりは長い詩を読んでいるような気さえするのだった。
あるいは、夢(悪夢)のようでもあるし、迷路に紛れ込んだ不思議なかんじなのである。
また、私の苦手なセンテンスの長い文章が多く、「ゆるやかな午後」にいたっては、最初から最後まで句点がない。
ただ、それでも最後まで読み終えたのは、「当代一のことばの使い手」の魔術のなせる業?
おまけに、続けて同じ講談社文芸文庫の別の短編集まで読んだのだから、自分でも感心する。
2冊目は、私が単行本も持っていて、彼女の小説家としてのデビュー作「愛の生活」ほか9篇の短編集なのだが、正直こちらの方が読み易いのだった。
「愛の生活」は金井美恵子の小説デビュー作なのだが、私が彼女を初めて知ったのは、雑誌「現代詩手帖」に載った「ハンプティに語りかける言葉についての思いめぐらし」という詩である。
ハンプティ・ダンプティは、ルイス・キャロル作「鏡の国のアリス」に出てくる卵の形をした詩人なのだが、金井美恵子は私にとって、当時と変わらず、不思議の国アリスならぬ美恵子さん、である。