ここ1ヶ月ばかりかそれ以上、本屋に行っても買ってまで読みたい本がなく、仕方なく手持ちの本の再読、再再読でなんとか凌いでいた。こんなとき図書館へ行ってみると思わぬ収穫があるのである。2週間ほど前久し振りに図書館に行き、ウロウロして目についた面白そうな本を4冊借りてきた。その中の1冊がこの金井美恵子の「お勝手太平記」である。
金井美恵子と言えば、じつは一昨年から昨年にかけて刊行されたエッセイ・コレクションのうち2冊をまだ読んでなく、本棚に鎮座ましましている。
でもそれを差し置いてのこの「お勝手太平記」なのだった。
こんなに一気読みしたのは最近珍しいのではないか?
とにかく、捧腹絶倒とまでは言わないが、何度声をあげて笑ったことか!
毒気とユーモア、金井美恵子節炸裂、とでも言えばいいのか。
エッセイではなく小説なのだが、それはその虚実ない交ぜというか、随所に金井美恵子本人が見え隠れする。
それというのも、趣味は読書と手紙を書くこと、と言う主人公アキコが女友だち数人に宛てた手紙で成り立つ書簡体小説なのである。
アキコはモチロン作者と同年齢、初老の自称「手紙の吸血鬼」なのである。
アキコはひたすら手紙を書きまくる。
そして、連想ゲームのように話しが果てしなくぶっ飛び拡散、横道にそれるどころの騒ぎではない。
あげく、本人もなんの話しだったか分らなくなる有様。
これは金井美恵子のエッセイでも同じなのだが、私的にはエッセイよりはるかに読み易く、面白い。
なにより、手紙なので文章が解り易く、センテンスが短い。
かといって、内容は古い映画が次々と取りあげられたり、懐かしい歌謡曲の歌詞からコオロギのうんちくまで、とにかく多彩で饒舌。
私が今まで読んだ金井美恵子本の中でも、この「お勝手太平記」はイチバンかも。
じつは、金井美恵子の小説はあまり読んだことがなく、これはエッセイよりも小説を読むべし、と認識を新たにした次第。
年齢も同じくらい(ほんとはちょっと上)、性格もよく似てる(可愛くない)、金井美恵子さんあなたは私の〇〇デス!