去年は珍しく観たい韓国映画がなく、残念ながら一本も観なかった。
それが今年は年明け早々韓国映画、しかも、キム・ギドク製作・脚本・編集の映画を観た。
監督こそこれがデビュー作の新人なのだが、「レッド・ファミリー」はまさしくキム・ギドクの映画なのだった。
南北問題を扱った韓国映画はこれまでにも何本かある。
けれど、それを政治や軍隊抜きで、これほど切実に強烈に訴えかけた映画を私は知らない。
それほどこの映画は、国家を民族を分断されることの理不尽と悲哀が観る者の心を捉えて離さない。
たまたま隣同士で住むことになった二組の家族。
一方は一見仲睦まじい家族だが、実は北朝鮮のスパイで任務のための偽家族。
もう一方は、夫婦と息子と祖母の4人家族だが、夫婦喧嘩が絶えないダメ家族。
本当の家族を人質に取られた偽家族は、隣の家族は「堕落した資本主義」だと軽蔑する。
しかし、歯車が狂い大失態を犯した偽家族の最後のミッションは、隣りの家族の暗殺だった・・・
キム・ギドクファンで、彼の映画はほとんど観ている私でさえ、あらためてよくこんな面白い映画を作った、と驚く。
今までも、毎回テーマを変え、しかも、毎回斬新で前衛的な映画作りをしてきたキム・ギドク。
しかし、家族という私たちに一番身近でありふれた題材を使って、こんなにも感動的な映画を作ってしまうなんて!
もちろん、新人ながらギドクの期待に見事にこたえたイ・ジュヒョン監督の才能は見逃せないだろう。
もしこれがギドク自身の監督だったら、たぶん、もっと過激になっていたのではないだろうか?
それと、こんなにセリフが多くはなかったかも・・・・・
とにかく、観終ったばかりということを差し引いても、今年これ以上の映画はあるだろうか?
キム・ギドク恐るべし!韓国映画恐るべし!