昨日急に思い立って、京都市美術館へ行きたかったバルテュス展を観に行った。
お天気が曇り模様だったので、暑さも少しはマシではないかと思ったのである。
バルテュスは官能的な少女の絵で有名なのだが、私にとっては美しい日本女性を妻とし、スイス最古の木造家屋に暮らす画家、として知っていたのだった。
そんなわけで、今回初めて少女の絵ばかりではなく、多くの作品を直に観ることを楽しみにしていた。
バルテュスの絵は具象画ではあるがたんなる写実ではなく、様式化されており、非常に静謐である。
彼は初期イタリア・ルネサンス絵画の伝統に学び、20世紀美術のどの流派にも属さず、孤高を守り通した画家である。
古典的で静かではあるが、過激な具象画でもある。
椅子に座ってただ休んでいる少女たちは、自分のエロスを知らない。
無自覚で無意識で無邪気でさえある。
しかし、無自覚で無意識で無邪気なエロス(あるいは悪)ほど罪深いものはないのである。
バルテュスは「この上なく完璧な美の象徴」として少女を描き続けたという。
しかし、私は彼の風景画が意外に好きだったりした。
それは、どこか日本画を彷彿とさせるものだった。
バルテュスには元々東洋的なものがあって、それはやがて節子夫人との出会いへと運命づけられていたのではないだろうか。
今回の展覧会では、スイスのアトリエがそのまま会場に再現されていたり、愛用品や日本人との交友の記念品も多々展示されている。