この暑すぎる夏に、あるときは寝る前つかの間の涼しさの中で、
あるときは酷暑の昼間汗をかきつつ、読んだ本の数冊を忘れないうちに・・・
「永続敗戦論」 白井聡著
じつはこの本は読み終わったばかりで、内容を完全に理解できたか自信はないが、一読の価値あり、とくに若い人にオススメ。
戦後ほぼ70年、敗戦を終戦と言ってごまかし続けてきたすべての日本人に対する、若き論客の鋭い提言。永続敗戦とは、敗戦を否認するがゆえに敗北が無期限に続くということ。しかし、3・11以後、日本は「平和と繁栄」の時代から「戦争と衰退」への時代になったことを直視せざるを得ない状況になっている。
なかでも目からウロコだったのは、いま安倍政権によって着々とすすめられつつある憲法改正、とくに第九条ににかんして、この本を読んではっきり分かったことがある。それは親米(というよりは対米従属)の保守勢力が憲法は米国の押しつけだから改正しようと言い、反米の革新勢力の方が護憲派だというパラドックス。
でも、私のような素人にとってはそんなことはどうでもいいのだ。ただ、憲法九条が私たち日本人を戦後70年近く戦争から遠ざけ護ってくれた事実、それは確かである。たとえ沖縄に米軍基地を押し付けてきたとはいえ。朝鮮戦争、ベトナム戦争にも参戦せず、むしろそれによって経済成長さえしたのである。そんないわば掌中の珠をけっして手放してはならない、と私は思う。
この国が戦争を放棄したことは、世界にとって、人類にとって一つの理想なのである。フツーの国になることはさらさらないのである。なぜなら、戦争は被害者になると同時に必ず加害者でもあるという事実に目を背けてはならない。最近北朝鮮や中国の脅威が盛んに言われるが、過去の歴史を鑑み、もっと大人の対応をするべきである。蛇のごとく聡く鳩のごとく素直なれ、と聖書にもあるではないか。
領土問題についても詳しく書かれていて参考になる。さいごに「各人が自らの命をかけて護るべきものを真に見出し、それを合理的な思考によって裏付けられた確信へと高めることをやり遂げることが必要である」と書かれている。ただ、読後感はを申せば、気持ちが暗くなるのはほんとう。だけど一気に読めるのもほんとう。
「人口減少社会という希望」 広井良典著
この本は、「永続敗戦論」と逆で、読後気分が明るくなる。なので順序としてはこちらを後に読んだ方がいいかも。ただ、その内容にもかかわらず、私的にはなぜか時間がかかった。
まず、人口減少を希望ととらえる考え方に賛同する。我が人生の師匠故深沢七郎師曰く、東京は300人位でいいそうだがそれはなんぼなんでも・・・。ただお上が少子化少子化と騒ぎ、産めよ増やせよと叫ぶのは止めてもらいたい。この本にも書かれているが、日本の人口は明治維新以後異常に増え、それは第二次大戦後も続くのである。
そしてこの人口増加は、富国強兵のスローガンと共に行きつき挫折するのだが、敗戦後は経済成長がそれに取って代わることになる。しかし1990年以降その経済成長にも陰りが見え始めるのである。そしていま、私たちは漸く拡大・成長・上昇の呪縛から目を覚まそうとしているのである。
経済成長ではなく、成熟経済、あるいは成熟社会の在り方はどうあるべきかが、具体的に詳しく書かれているのだが、それを纏めるのは至難の業、どうかご容赦ください。すべて賛成とはいかないにしても、方向としては概ね納得できるのだった。
あと新書2冊は、さっと読んだだけでアシカラズ。
暑さと、ちょっと長めの記事で少々疲れました~