私が見る数少ないテレビ番組のひとつ、100分de名著の4月は夏目漱石の「こころ」である。
講師は漱石好きの姜尚中氏である。
第1回目放送のあとテキストを買いに本屋へ行くと、姜氏の「心」という本を見つけた。
ちょっとタイミング良すぎ!とは思ったが、つい買ってしまったのだった。
(同じタイトルなのでややこしいのだが、漱石の方はひらがなのこころ、姜氏の方は漢字の心で区別)
「こころ」は、学生である私と10歳以上年長の先生との出逢いから始まり、先生から届いた分厚い手紙、遺書で先生の真実を知らされることになる。
一方「心」は、同じく大学生と還暦を迎えた大学教授とのメールのやりとりを通しての心の交流がえがかれる。そしてどちらも、人間の生と死、恋愛と孤独がテーマである。
「心」の時代は東日本大震災を挟んで、二人が出逢った前年末からほぼ一年半の間の、主として学生からの問いかけに、姜尚中という大学教授が答えつつも、自分自身の心をも見つめなおしてゆく。
その間、ゲーテの「親和力」という作品が劇中劇のように挿入されていて、自然と人間というテーマにも切り込んでいる。
『「死」って結局、「生」を輝かせてくれるものじゃないでしょうか。先生は「死」の中にはその人の人生の「記憶」があり、その人の「過去」があるっておっしゃいました。だから「死」によってその人は永遠になるって。~中略~
だから無駄に生きちゃいけない、やりたいことはやるべきだって思うようになったのです。』
東日本大震災で喪われた多くのいのち、身近で喪われた大切なたったひとつのいのち、この本はそんな全ての喪われたいのちへのレクイエムのようだ。
とくに姜氏の息子さんへの・・・・・
余談ですが、漱石の「こころ」をiPadで読み直しています。