第148回芥川賞が発表されて以来、作者黒田夏子さんの年齢が話題になり、そのせいかどーか本がよく売れているようである。
おかげで、本屋に行っても無く、久しぶりにアマゾンに注文、ということになった。
野次馬根性、という点では私もさして変わらないのだが、横書き、ひらがな多用という「a b さんご」を読んでみんとて・・・
この本、黒田さんの約半世紀前の作品が三篇収録されており、縦書きのそれらと、横書きの本編がリバーシブル仕立てになっている。
「a b さんご」は、私的には、まるで古文を読んでいるような心地がした。
古文は最初ざっと読み、それから単語を調べつつ意味を理解してゆく。
ただ古文と違うところは、言葉の意味は辞書ではなく黒田さん独自の使い方にあるようである。
横書きにかんしては水村美苗氏の本にもあるが、漢字が少なくひらがなが多い文章は、区切りを間違えないよう注意して読まないといけない。
また、いくら横書きとはいえ日本語の場合コンマとピリオドではなく、てんとまるにしてほしい。
難解といえば難解、ただ、こうゆうカタチでしかあらわすことのできない世界だったのではないだろうか。
若かりし頃の三篇を読むと、当時から才能があったことがよく分かる。
なかでも、「虹」という作品が私はとりわけ好きである。
75歳で芥川賞受賞も快挙だが、それよりなにより、秘かに静かにずっと書き続けてこられたことのほうが素晴らしい、と私は思う。
野次馬ついでに、戦後最年少で直木賞受賞という朝井リョウ氏の「何者」も読んでみた。
もっと軽く読めると思っていたらあんがい重い。
就活が若者に落とす影のふかさに、今どきの若者に好意的な私としては心が痛む。
いったいいつから若者にこんな試練を与える社会に、国になってしまったのだろうか。
同時に、ネット社会の危うさも気になるところである。
老婆心ながら、若者よ孤立を恐れるな、と言いたい。
この「現代をとらえた斬新な青春小説」は、若者ではなくもっと上の世代が読むべきかもしれない。
もう一人の直木賞受賞者阿部龍太郎氏の「等伯」は図書館にリクエスト(すみません)したのだが、さていつのことになるのやら・・・