最終日の今日、ぎりぎり観に行くことができた今年最初の映画である。
60年も同じ家族のメイドとして4代に仕えた桃さんという女性の、晩年が描かれる。
実話を基に作られたらしいが、今となっては古き良き時代のおとぎばなし、なのかもしれない。
映画プロデューサーロジャーは中年の独身男、家事は何から何まで桃さんに頼りっぱなしである。
妻はおろか母親以上の気遣いと世話をする桃さんは、彼にとってはただのメイドでしかない。
私なんぞ、オイオイちっとは自立しろよ!と言いたくなる。
ところが、桃さんが脳卒中で倒れたことからロジャーの献身がはじまるのである。
桃さんがいなくなって始めて、自分にとって彼女がいかに大切な人であったかに気づく。
桃さんの希望で介護付き老人ホームに入所させるのだが、その費用を払い、仕事で忙しいなか度々訪問しては桃さんを喜ばせる。
けっして悲しくはないのだが、しらずしらず涙がこぼれて仕方がないのである。
メイドとはいえ、ほんとうに誠心誠意自分に尽くしてくれた桃さんにたいしてロジャーがとった行為に、素直に感動するのである。
人と人とのふかい信頼関係、それは血のつながりをも超えて強いものにもなりうることを知る。
香港映画を支える女性監督アン・ホイが、プロデューサーのロジャー・リーの実体験を映画化。
マザコンならぬタオコンな中年男を演じるのが、香港映画の大スターアンディ・ラウ。
主演の桃さんを11年ぶりの映画出演となったディニー・イップが演じ、数々の映画賞を受賞。
しあわせとはなんなのか。
他人のために無私無欲に生きた桃さん、それもまたしあわせな人生だったのではないだろうか。