作者モーリス・ルブラン没後70年目にして初めて出版された、未発表の幻の作品。
それまで、最終稿に至っていないという理由で、遺族が出版に賛成しなかったようである。
しかし、諸般の障害を乗り越え、今年5月フランスで出版される運びとなった。
今回、その翻訳本が出たので、さっそく読むことに。
何を隠そう、アルセーヌ・ルパンは、私の小学生の頃の愛読書だったのである。
それも、たぶん、全作品を読んでいる。
童話から大人の小説へと移行するちょうど中間くらいの時期だと思う。
ただ、あんまり女の子が読む本ではなかったかもしれない。
だいたい童話も、小公女や小公子、赤毛のアンなどは読まず、もっぱらドリトル先生だったりした。
さて、「ルパン、最後の恋」は、残念ながら少々期待ハズレではあった。
かってのように、血沸き肉躍る、というわけにゆかないのは、私の年齢のせいか、はたまた作品が推敲不足なせいなのか。
ただ、ルパンファンとしてはやはり読まずにはいられないのであった。
それよりなにより、私的にはもっとオドロクベキ事実に唖然となった。
その小学生時代の愛読書が、ほぼそのまま我家に残っていたのである。
なんぼ物持ちがよく、とくに本は棄てないとはいえ・・・
何時持ってきたのか記憶にさえないのだが、実家が引越しをした折、残してきた本の中からルパン全集を拾いあげたのではないか、と思う。
多少の欠落もあり、表紙もボロボロではあるが、全集のほとんどが揃っているのである。
今もあるか不明だが出版社は鱒書房、保篠龍緒訳、初版は多くが昭和31年、1冊120円である。
中を見ると、上下2段組みになっており、字も小さく読み辛い。
懐かしいというよりは気恥ずかしい、ってもんなのだが、今さら棄てるわけにもゆかず、そっと本棚に戻す私なのだった。