この週末、天気予報に雨マークがついていたので、庭仕事をするつもりでいた。
でも降るには降ったが、土が軟らかくなるほどではなく、結局諦めた。
仕方なく本棚を捜して見つけたのがこの小川洋子の「最果てアーケード」。
読みたくて買っておきながら、なぜか本棚の片隅に置いたまま忘れていたのだった。
「最果てアーケード」もまた、世界の片隅にひっそりと佇む、世界の窪みのような小さなアーケードである。そこに売られているのは、アンティークレース、使用済みの絵葉書、義眼、古い勲章、ドアノブ等など・・・
そして、それぞれの店主たち、買い物に来るお客たちは、みなどこか現実離れしている。物語は、配達係りでもある大家の娘によって語られてゆく。
しかし、これがまたまたどこか不可思議。そして、遺髪レースというお話しに辿り着くや、もしや、と感じていたことが俄かに真実味を帯びてくるのである。
ここは、この世でもあの世でもない、いつもの小川ワールドなのである。
そして、この物語に登場する者はみんな、過去と記憶の中に生きているかのようである。
セピア色の写真のように、セピア色の物語。
そして通奏低音のように流れる、喪失感と死の気配。
今の私の心情になぜかぴったりの、かなしくもうつくしい物語なのだった。
この本はコミックの原作として書かれたようだが、私の頭の中には今もしっかりと映像が残っている。
なので、敢えてコミックを見る気はないのである。