「母の遺産」に続いて今話題の新刊を。
ある一枚の絵をめぐる謎とロマンとミステリー。
その一枚の絵とは、アンリ・ルソーの「夢」と酷似した「夢をみた」という絵。
その絵が本物か偽物かの鑑定を、怪物と呼ばれる老コレクターに依頼された二人の人間。
一人はMoMA(ニューヨーク近代美術館)のアシスタントキュレーター、もう一人はパリ在住のルソー研究者である日本女性。
二人はある意外な方法によって七日後に答えを出すばかりか、勝負を迫られる。
勝者には、絵の取り扱い権利を譲渡するという。
つぎつぎ二人を襲う試練、しだいに明らかになってゆく真実、陰謀と疑惑が渦巻く中で二人の気持ちがいつしか寄り添うようになってゆく。
なぜなら、二人ともルソーをこよなく愛しているからである。
20世紀初頭のパリ美術界の様子、一枚の絵画にむらがる美術界の裏側等など・・・
虚実ないまぜてのストーリー展開は面白く飽きさせない。
そして、意外な結末が読者に用意されているのである。
この勝負から10数年後から話しは始まるのだが、ナント!舞台が倉敷大原美術館だった。
大原美術館にも、小さいけれどルソーの絵がたしか一枚ある。
この本を読んで、ルソーの絵を見たくなり、古い画集をひっぱりだした。
一枚の絵が人々の空想を掻き立て、小説や映画になったことはこれまでにもある。
まこと、絵のチカラの大きさを、あらためて思い知ったのだった。