本のレビューは止めるつもりだったのだが、気が向いたらしてみんとて・・・
昨日たまたま本屋に行って、今期の芥川賞受賞2作品の単行本を見つけてしまった。
若かりし頃のように文芸雑誌を読むほど熱心ではないが、今だに、受賞した作品を単行本か文春で読む程度の好奇心は残っているようである。
今期の芥川賞は、まったくタイプの違う2作品が選ばれた。
純文学の王道と評される田中慎弥の「共喰い」と、前衛的な作品円城塔の「道化師の蝶」である。
どちらか片一方では、これからの日本文学の在り方としては不十分だということかもしれない。
「共喰い」は、17歳の息子とその父親との葛藤が息子の目を通して描かれる。しかも、性と暴力だけが肥大化して描かれている。
人類永遠のテーマではあるが、最初から最後までかなりしつこい。ただ、会話が全て方言であることが、ひとつの救いになっている。
パソコンも使わない、いわゆる今風ではない作者そのままに、作品も古めかしいといえば古めかしい。
しかし、注目を浴びた受賞インタビューもだが、時代に迎合しない姿勢は好きなので、応援したい。
この本には「第三紀層の魚」という作品も収録されているが、少年と曾祖父との年齢を超えた交流を通して、生と死が静かに描かれる。
二つの作品に共通しているのは、川や海といった水である。
「道化師の蝶」は、全篇を通してのストーリーはない。(と思う)
Ⅰ~Ⅴまでのパーツに別れていて、そのパーツごとに主人公が変わっているのである。
が、まったく繋がりがないわけでもないよーな・・・
いやはや、わけ解りません。
でも、読みにくいかといえばけっしてそうではなく、わりとサラサラ読めるのである。
つまり、長い詩を読むようなかんじ、とでもいうか。
なぜか料理や手芸のはなしが出てくるⅢ章は一番好きで、こんなステキな一節もある。
「わたしが忘れてしまうのは、記憶そのものではなくて、記憶の仕舞われる場所の住所だ。」
実は、こちらも「松ノ枝の記」という作品も収録されているのだが、おそれをなして?まだ読んでいない。
最近、テレビを見る時間が減った分、本を読む時間がますます増えている。
・・・てことは、我家に本がどんどん増殖するのである。
今や、本が机の上に平積み状態で置かれている始末。
地震があってもなくても、ヤバイ状態である。
でも、こーゆー時代遅れな人間も、だんだん少なくなっているとしたら、絶滅危惧種として存在するのもいいかも、と思う今日この頃である。