カズオ・イシグロの小説
「わたしを離さないで」が
映画化された。
原作を読んだ時も感じた、しずかな衝撃、心底から凍りつくような戦慄が甦る。
その残酷さは、ひょっとしたら、アウシュヴィッツ以上かもしれない。
なぜなら、アウシュヴィッツは、閉じられた空間の中の恐怖であり、逃げ出せる外部があった。
しかし、ある目的のためだけにこの世に生まれ、その目的が終わると同時に死ぬことを運命づけられた者には、逃れる場所は死、しかないのである。
ヘールシャムという施設で育ったキャシーとルースとトミー。
キャシーはいじめられっ子のトミーに好意をいだき、なにかと世話をやくうち二人はカップルになる。
しかし、嫉妬にかられたルースが二人の仲を裂き、トミーを横取りする。
・・・といった、10代の若者によくある三角関係が描かれるのだが、どことなくフツーではない。
その違和感は、原作の方がより濃厚なのだが、映画は映画でよりリアルである。
とにかく、このSFの世界が現実にならないことをただ祈るばかり、というのが正直な感想である。
今、日本では脳死による臓器移植がすすめられている。
それに反対はしないが、、私に限って言えば、私は臓器の提供は受けないしまた提供するつもりもないのである。
なぜなら、私が信奉する整体では、「人間はパーツの集まりではなく、一粒の細胞が分裂してできあがったもの」として捉えられているからである。
「わたしを離さないで」というタイトルは、トミーがキャシーに贈ったテープの曲の題名なのだが、その歌が私の抱いていたイメージとぜんぜん違って、ちょっと意外だった。