雪も灰も降らず青空にさえ恵まれ、贅沢を言っては罰が当たるのだが、今日はめっぽう寒い。
朝から新聞を取りに出ただけで、ずっと家に籠っている。
そこでヒマつぶし、といってはナンだが、続けてもう1冊レビューなんぞしてみんとて・・・
実は昨日も冬籠り、あるいは引き籠り状態で、おかげで「四雁川流景」を読み終えたのだった。
七篇の短編小説集である。
七篇はそれぞれに完結はしているのだが、どこかに繋がりをかんじさせる。
それは、各篇に流れる四雁川という川のせいばかりではない。
どの話にも人間の死が、すぐ傍らにいつもひっそり佇んでいる、ようである。
そして、その死に向かって私たちは生きているのであると、静かに受け入れる。
死は老いの次に、あるいは病のあとにくるとは限らない。
それはある日突然やってくることもあるのである。
中でも印象的だったのが、「スクナヒコナ」という少年を主人公にした話である。
無邪気だった少年は、ある日突然大人になる。
身体の変化ばかりではなく、直感的に、隠された秘密に気付くのである。
そこにも死が、そしてエロスが垣間見え、ちょっとゾクっとさせられる。
四雁川というのが実在するのかどうかは分らぬが、人生のようでもあり、また逆らい難い流れのようでもある。
その川面に、光り輝く一瞬を見つけられたらと、俗人は切に願わずにはいられない。