平野啓一郎初の恋愛小説、ということでそんなに期待はしてなかったが、やっぱり・・・
シチュエーションがあまりに特殊で、二人の恋愛どころではなかった、というのが正直なところである。
交通事故で片足を大腿部から切断、という災難に見舞われた美しい女優と彼女を事故から救いだし、やがて頼まれて義足をデザインすることになったプロダクトデザイナー。
しかもその義足は、生身の足に似せたものではなく、義足についての価値観を変えるものでなくてはならない。
障害がむしろ人から羨ましがられるようなチャーム・ポイントになる奇跡を起こすような、世にも美しい義足でなくてはならないのだった。
やがて、彼女はリハビリに励み、彼のデザインした義足でパリコレでモデルとして出演することに・・・
その間、当然二人の間に愛が芽生えてゆくのだが、二人の恋愛よりも、義足が成功するかどうかが気になって、まるで義足が主役みたいである。
特にラスト、パリコレの舞台で無事モデルが務まるかどうか、ハラハラドキドキして、最後は一気に読んだ、という具合。
これって、たぶん著者の本意ではない、と思うのですが。
私的には「日蝕」、「一月物語」など初期の作品の方が好きでした。