相変わらず本を乱読はしてるんだけど、ずっとレビューをサボっていた。
この本は、昨日あまりの寒さで一日家に篭り、モモの側で一気に読んだばかり。
ちなみにこの本は、昨年末の週刊ブックレビューで中江有里さんが推薦されていた。
あなたは人生において、なんであの時あんな行動に出たか、自分でも理解に苦しむようなことがあるだろうか?
つまり、自分の意思とは違う別の何かによって動かされた経験が・・・
もし全くない方なら、この小説ははただ歯がゆく、ストレスが溜まるだけかもしれない。
でももしそんな経験があるのなら、この小説は、あるいは、身につまされることになるかも・・・
モチロンあなたが、主人公ほど「土手の柳は風まかせ」の生き方ではないにしても。
海辺の街で書店員として働いていたミチルは、地元の恋人がありながらある日突然、出張で来ていた不倫相手と東京へ行ってしまう。
しかも、昼休みにその男をバスターミナルまで送るつもりが、空港までになり、本人が考えもしなかった東京まで一緒に行くことになってしまうのだった。
おまけに、上司に頼まれて買った宝くじの束を持って・・・
やがてその宝くじの一枚が2億円の当りくじであり、その2億円をミチルがネコババしたことから、彼女の人生が大きく変わってゆく。
ミチルが強欲であったかというと決してそうではなく、当座の生活費が欲しかっただけなのだが・・・
この行き当たりばったりで頼りなげなミチルの一連の身の上話は、しかし本人の口から語られるのではなく、最後のさいごに登場するミチルの夫の口から語られるという込み入った仕掛けになっている。
モチロン、現実的にはこの主人公のように、他人の宝くじで2億円せしめることも、目の前で殺人事件に出会うことも、また、その死体遺棄に関与することも、まずないとは思う。
しかし、それを運命と呼ぶか偶然と呼ぶかはべつにして、もし自分の人生を客観的に俯瞰できるとしたら、思わず目を瞑りたくなるのではないか、少なくとも私なんぞは。。。