この本は、週刊ブックレビューで読書家の中江有里さんが紹介、推薦された。
そのとき私はふと、だいぶ前のことになるが、ある友人がよしもとばななを読んでみたら?と勧めてくれたことを思い出した。
そして、そのときはなぜか読まなかったことを思い出し、急に読んでみたくなった。
読み始めると一気に、何かにとりつかれたみたいに読み終えたのだった。
ひと口で言うと、ファンタスティックなオトナのおとぎ話のようである。
ストーリーに引っ張られるワケでもなく、主人公に共感するワケでもなく、何か不思議な小説世界にいつのまにか引きずり込まれているのである。
その不思議な感覚のままラストまで引っ張られ、そして、爽やかな読後感が残るのである。
それはちょうど、美味しいワインを飲んで、気持ちよくほろ酔いしたって感じである。
私的には、魔女とか白魔術とか降霊会とかが出てくると、実は苦手である。
なにしろ、占いの類はハナから信じず、スピリチュアルなんぞ身の毛がよだつほど嫌いである。
でも、この小説では、それらが必要だったのかも?
読者に魔法をかけるために・・・
この小説は主人公由美子の一人称で書かれているのだが、いとこの昇一との会話が非常に多いのが特徴である。
そして、その会話の中に、宝石のようにキラキラ輝く、たぶん作者の言葉がちりばめられている。
そんな中のひとつ「そうか、ピクニックそのものよりも、イメージで人は活気づくんですね。イメージが全てなんだ。でも、イメージ以上のものを知るには、今の瞬間にぐっと参加することしかないんだ。」
評価は分かれるかもしれないけど、私の好きな一冊です。