まるでキャッチコピーみたいだが、この作品は長崎を舞台に、あるひと夏の祖母と4人の孫たちの心の触れ合いを詩情豊かに描きつつ、静かにしかしするどく反戦反核を語りかける映画である。
ある夏休み、いとこ同士の4人の孫たちが長崎の祖母の家にあずけられる。
彼らの父あるいは母が、祖母の兄の住むハワイへ出かけたからである。
テレビもない祖母の家での暮らしは耐え難く、また祖母の作る食事も口にあわない。
ある日長崎市内へ買い物に出かけた彼らは、祖父が被災し亡くなった学校の校庭を訪れる。
祖母の深い哀しみ、傷ついた心、今なお消えないあの日の鮮烈な記憶を、いつしか孫たちも共感するようになる・・・・・
原作は村田喜代子の芥川賞受賞作品「鍋の中」。
主演の祖母には村瀬幸子、ハワイからやって来る祖母の甥にリチャード・ギア、大学受験を終えた孫に吉岡秀隆などが出演。
音楽にはシューベルトの「野ばら」が、まるで孫たちを象徴するかのように使われる。
平和への願いを込めた、黒澤映画珠玉の一編です。