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ライフログ
「死んだら何を書いてもいいわ」 萩原朔美著
これは、萩原朔美さんが母葉子さんについて書いた本である。
萩原葉子さんは、詩人萩原朔太郎の娘であり、「蕁麻(いらくさ)の家」などで知られる作家である。
けれど私が萩原葉子という人に興味を持ったのは、残念ながら作品を読んだからではなく、彼女の生き様であり、「出発に年齢はない」ということばであった。

実際、萩原葉子さんは、62歳で自分の家にダンススタジオまで作り、84歳で亡くなるまでダンスに打ち込んでいたのだ。
プロのダンサーとしてずっと踊り続けていたのなら分かるが、ダンスを始めた年齢もかなり遅い。
しかも、社交ダンス、タップダンス、ジャズダンス、フラメンコと、多岐に亘っている。
ほかにも、いろんな物作りもしていて、それらはほとんど60代になってから始めている。
まさしく、「出発に年齢はない」を実践していたのだ。

萩原葉子・朔美親子は、世間の一般常識とはかなりハズレているかもしれない。
朔美さんが中学校の時から、二人は一緒に暮らしておらず、最後の186日間の同居までは、ほとんど没交渉であったという。
けれど、いろんな夫婦のかたちがあるように、いろんな親子のかたちがあっていいのだと、私は思う。

文学者の娘には、なぜか父と同じ文学者になった人が多い。
幸田文、森茉莉、広津桃子、津島祐子等など・・・・・
萩原葉子さんも、詩と小説の違いはあるが、文章を書く道を選んでいる。
そして朔美さんによれば、父親が文学者の娘は、結婚生活が上手くいっていない場合が多いという。
それは無意識のうちに、イメージの中で理想化される父親と日常の中で矮小化される夫とを比べてしまうから、らしい。

私が思うに、やはりコセー的なユニークな人が多く、その作品よりも当人の方が面白かったりする(失礼!)
その一番傑作は森茉莉さんで、私は作品も少々読んではいるが、本人が一番面白い。
なにしろ、家中物、特に本が溢れていて、ついにドアが開かなくなり、窓から出入りしていたとか、洗濯をしたことがなく、下着は川に捨てて新しいのを買う、なんて聞くと、うれしくなってしまう。

・・・とハナシが脱線してしまったが、葉子さんもモチロン、かなりケタハズレである。
そんな葉子さんが、生前朔美さんに言っていたこと「死んだら何を書いてもいいわ」が、3年後にようやく実現したワケである。
また葉子さんは、1枚のメモを朔美さんに渡している。
そのメモに書かれていたのは
朔美へ
(葉子の希い)
葬式なし
戒名不要
花、香典不要


「親は、子供が出来て親になっていく。子供は親が居なくなって、初めて子供を自覚するのである。」
という朔美さんの最後の述懐はまた私の実感でもある。
子供としての役割を終えた今、残るのは親としての役割である。
その時、私は萩原葉子さんのように毅然とした晩年を過ごすことができるのか、また我が息子が、親不孝を自認しながらも母親の最後の願いを受け入れた朔美さんのやさしさを持っているのかどうか、今は分からない。

この本をぜひ息子に読ませたいと思う、今日この頃である。


by fu-minblog | 2008-12-19 19:54 | | Trackback | Comments(2)
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Commented by feliza0930 at 2011-04-16 11:20
この本のお陰でなぜ私が母に苛立ったのかがわかった気がします。「目の前のみじめな母は自分の親じゃない、認めたくない。母ならこうあるはずだ」の思いがあったからなのですね。
葉子の息子はこれを「母に対する甘え」だったと書いています。私は甘えというのはちょっと違うかなとも思いますが・・・
母も自分の「老い」を受け入れることができなかった。
とにかく母も私も「老い」を直面するには弱すぎたのかもしれません。
Commented by fu-minblog at 2011-04-16 20:28
>feliza0930さん
萩原葉子・朔美親子は、ちょっと特殊ではあると思います。
ただ、親子って案外お互いのことを知らない、特に子供は親のことをよく知らないのではないでしょうか。
たとえば我家の場合、息子は18歳で家を出たので18年しか一緒に暮らしていません。
そのうち半分くらいは子供だったので、親を理解するのは無理なのです。
ちなみに、ネコの方が19年と長かったくらいです。
私は結婚するまで実家だったのですが、それでも20数年でした。
なので晩年の母は、もちろん老いもあったのですが、私の全く知らない母でした。
子供としては、いつまでも自分のイメージの母を求めるのかもしれませんね。
そして、歴史は繰り返してゆくのかも・・・・・
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